一匹の小さな魚の話 2


 彼女は少しずつ、読者のことを忘れていきました。読者も、いつの間にか彼女のことを忘れていきました。どちらが薄情だったのかなんて、そんなことはわかりません。それでも、互いに互いのことを忘れてしまったのです。
 長い時間が過ぎ、彼女の周りのたくさんのものが流れていきました。時間と共仲間のうちの何匹かも流されてしまいました。彼女の書いた長い物語の本も、何冊かは流されてしまったようでしたが、彼女はもうそんなことも気にしていませんでした。とにかく、物語の最後をみようと、ひたすら書き続けていました。そして、嵐の夜が来ました。
 いよいよ彼女は物語の最後に到達しようとしていました。そのそばをたくさんのものが流されてきました。見たことも無い動物も流されてきましたし、流木につぶされかけた時もありました。それでも、彼女は自分の書いたたくさんの本に囲まれて物語の続きを書いていました。彼女の家は何度もぎしぎしと悲鳴をあげました。積み上げた本が崩れる音も何回か響きました。少しずつ周りの物が流され始めました。
 物語の始めの方が流されていきました。電気スタンドが流されていきました。机の上に並べて置いたペンが流されていきました。物語の途中も少しずつ流されていきました。それでも彼女は今頭の中にある、今終わろうとしている物語を紙に繋ぎとめることに必死でした。椅子と机も流されてしまいました。彼女は必死に物語の最後を書き記しました。
 そして朝が来ました。そこに残ったのは一冊の本だけでした。しばらくして、新しい住民が流されてこの川底へやってきました。もちろん本を手に取って開いてみました。けれど、そこにはもう何も残されていませんでした。捨てられた本は流されて、海へ向かいました。本を書いた一匹の小さな魚の死骸と彼女自身の物語は大、いつしかきな大きな海へと飲み込まれていきました。


製作上の注意:何か…良く分からないよね?でも何となく気の向くままに書いたらこうなりました。今日は実験してて研究室にずっといたんだけど、、何故か先生も先輩も後輩もみんな早く帰って行ったので堂々とこんなものが書けたのでした、しかも大音量の音楽付きで。
 主人公(?)が魚で舞台が川底なのはどうも私の日々の生活(というか研究室での生活というか卒論というか…)に関係ありそうですね。魚のことは好きになれそうな時とやっぱり好きじゃないなぁと思う時が両方あります。いつか好きになれたら良いんだけど。
 それでは、おやすみなさい。またよろしくお願いします。
 20110217.23:45.


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